新規の医療機関が診療を始めるまでに行わなければならない多くの諸手続きがあります。基本的な流れと実務上よく見落としがちな点をご紹介します。
診療所を診療所として機能させるために必要な手続。
●診療所開設届(開業地を管轄する保健所へ提出)
事前相談の予約をして保健所に訪問し、診療所開設の届出用紙を取得します。
医師免許証の写しや履歴書等の添付書類も確認します。診療用エックス線装置を設置する場合は、別途、診療用エックス線備付届の提出が必要となります。
主に医院の名称、標榜科目、非常口の有無、患者用トイレとスタッフ用トイレの区別、診察室の手洗い等の指導があります。
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上記の留意点を踏まえて院内レイアウトを作成後、平面図を持参して再度確認のための事前相談に行きます。その場でレイアウトの指導がある場合を考え、設計士や内装業者にも同行してもらう方がよいでしょう。
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法律上は診療所開設後10日以内に開設届を提出することとなっていますが、実務的には開設届と添付書類を提出後、自由診療が可能となります。
都道府県によりますが、開業前もしくは開業後に保健所職員が医院に赴いての実査があります。
●保険医療機関指定申請書の提出
社会保険庁の組織改革に伴い、社会保険事務局で行っていた保険医療機関の指定は、平成20年10月1日から厚生労働省の地方厚生(支)局へ移管されています。
開業地を管轄する地方厚生(支)局のホームページから保険医療機関指定申請書をダウンロードするか、もしくはその地方厚生(支)局に赴き申請用紙を取得し、記入して提出します。
薬局といっしょに開業する場合は「第2薬局の禁止」に注意しましょう。
医療保険以外の保障部分にも届け出が必要なものがあります。
主な公費負担医療制度と届け先は以下の通りとなります。
制度 | 届け先 | |
結核医療 | ⇒ | 管轄の保健所 |
生活保護 | ⇒ | 管轄の福祉事務所 |
51公費(難病(特定疾患)) 乳幼児医療費助成制度(マル乳) ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親) 義務教育就学時医療費制度(マル子) 小児慢性疾患医療費助成制度 | ⇒ | 都道府県の担当課 (例:東京は福祉保健局) |
開発時の諸手続きは多く、意外に抜けてしまう点もあります。
●火災保険
物件の引渡しには火災保険への加入が完了していることが必要です。
借家人賠償特約と併せて検討した方がよいでしょう。
●動産保険
医療機器をリースではなく、購入にするのであれば、動産保険の加入の検討が必要です。
●セキュリティ
テナントの場合、建物全体で既にセキュリティが入っている場合もありますが、高額医療機器の採用や院内に麻薬や向精神薬を置く場合は検討が必要です。
●防火管理者講習
開業までに受講を済ませておいた方がよいでしょう。
<病医院建物全体の防火管理者をする場合>
1) 収容人員30名以上かつ建物の延床面積が300平米以上の場合は甲種
(講習2日間)
2) 収容人員30名以上かつ建物の延床面積が300平米未満の場合は甲種
または乙種(講習1日間)
<病医院テナントの防火管理者をする場合>
上記1) の建物でテナントの収容人員が30名以上であれば甲種、
30名未満であれば甲種または乙種
上記2) の建物でテナントであれば収容人員に関わらず甲種または乙種
※収容人員は次の1)~3)の合計
1) 医師、歯科医師、助産婦、薬剤師、看護婦その他の従業者の数
2) 病室内にある病床の数
3) 待合室の床面積の合計を三平方メートルで除して得た数
それぞれの講習スケジュールについては、最寄りの消防署や県内の各消防本部に問いあわせます。
●医師会への入会
医師会入会の最大の目的は地域の先輩ドクターと良好な関係を保つことですが、地区の健診事業への参加、医師国民健康保険組合への加入、特定産業廃棄物委託業者の紹介もメリットとなります。また、地域によっては契約医療(特定疾患、乳幼児医療等)の契約の取りまとめも行われています。
●固定電話加入申し込み時の留意点
開業物件が決定した後、固定電話の加入手続きをおこないますが、代表電話・FAX・メールやインターネット検索用・レセコンや電子カルテのメーカーからのリモート回線・セキュリティの発報用回線など使用する回線を決めてから光回線・ADSL・ISDN等の組み合わせ検討後、必要な本数を申し込みましょう。
また、FAXについてはG4FAX(複合機)を光回線では受信できないことにも留意しましょう。
基本的な手続きと見落としがちな諸手続きを例示しましたが、ドクターの診療方針や来院される患者の疾患によっては、さらに申請手続きが増えることも考えられます。開業準備中の諸手続きは多岐にわたり大変な作業です。税理士等の開業コンサルタントにご相談ください。
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